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ホログラフィートークってなんだろう?

 

今年初めてのブログになりました!

今日は私が時折取り入れる心理療法の一つ、ホログラフィートークについて書いてみようと思います。

というのも、私が所属する統合的アプローチを学ぶ若手の会で、先日担当者が自分の関心のあるものを共有する理論学習を担当することとなり、

昨年ワークショップの受講を一段落終えたことから、ホログラフィートークについて紹介をした機会がありました。

タイトルはズバリ、「ホログラフィートークをトークしよう」
ギリギリまで準備に手を付けられていなかった私は、ちょっとポップなタイトルをつけておけば、発表内容がダメダメでもみんなきっと許してくれるだろう・・・。という非常に浅はかな魂胆から、最終的に安易なタイトルを付けました。

発表後はメンバーからあたたかな感想や質問をもらえ(なんてみんな優しいんだ!)、タイトル通りホログラフィートークについてトークができた良い時間となったのでした。


せっかく発表したのだから簡単にでも残しておこう!と思い今キーボードをカタカタ叩いているわけです。
という訳で、早速ホログラフィートークについてなるべくわかりやすく紹介してみようと思います。

 

 

ホログラフィートークって?

ホログラフィートークを一言であらわすと、

イメージを存分に使いながら短時間で心の傷を癒す比較的新しい日本生まれの統合的な心理療法と言えるかと思います。

ホログラフィートークは嶺輝子先生によって考案されたセラピーです。
Cl.が自分の感情や身体症状を元に意味を読み取り、解決し、自分を癒すプロセスを軽催眠を利用しながら1回のセッションで取り組んで行きます。


ホログラフィートークという名前が非常にユニークで印象的ですよね。

この名前はホログラム写真が由来となっています。

 

ホログラム写真で身近なものはお札がイメージしやすいかと思います。

※独立行政法人国立印税局 公式HPより

 

見る角度によって光を放ちながらデザインが変わる、誰もが一度は手に取ってピカピカさせたことがあるだろうこれがホログラムなのですが、お札には盗難防止のためにホログラムが利用されています。

このホログラム写真は細かく裁断しても立体的に全体が光りながら浮かぶのが特徴です。
そのため、ホログラフィートークのトラウマの断片に光を当てて全容が見えてくる、という点が似ていることからこの名前が付けられました。

 

 

ホログラフィートーク誕生の背景

ホログラフィートークが誕生した背景には、様々な技法を嶺先生が学ばれる中で、顕在意識でクライエントのトラウマを扱おうとすると、封印されていたトラウマ記憶にアクセスできなかったり、アクセスできても警報装置の誤作動でフラシュバックに襲われる、クライエントによっては、強い抵抗を示すというケースも少なくなかったという、これまでのトラウマケアの難しさがありました。


より短時間でなおかつできるだけCl.への負担が少ない方法をということで様々な技法の有効と思われる要素を取り入れられながら確立されてきました。

実際にこの技法にはブリーフセラピーや催眠、行動療法、フォーカシング、タッピング、自我状態療法・・・などなど様々な心理療法のエッセンスが盛り込まれており、まさに、統合的な心理療法と言えるかと思います。

 

また、先ほどからトラウマと表現されていますが、ホログラフィートークが対象とするトラウマは必ずしも精神医学的ににPTSDや複雑性PTSDと診断される内容のトラウマとは限らず、広域にわたります。

クライエントに生きづらさを与えている症状や感情、身体感覚などを幅広く扱うことができるとされています。

 

ホログラフィートークの進み方

では、ホログラフィートークはどのように進められてゆくのでしょうか。

ホログラフィートークのHPを引用しながら簡単に触れて行きたいと思います。主に4つのステップでセラピーが進行してゆきます。

ステップ1:課題の特定
 その日に取り扱う課題を決定します。先ほど述べたように心の問題だけでなく、身体的疾病等も対象となります。

問題を色や形に例えて外在化して、それと語り、退行の準備を進めます。

ステップ2:問題の核心に迫り解決する
 核心場面まで退行して行きます。過去の問題場面の内容を確認し、過去のクライエントの望みを踏まえた解決を施します。

問題の本質だけでなく、隠れた問題を明確にし、問題の人物や問題、その影響からも距離を施します。

ステップ3:健全化の構築
 問題の人物の代わりに健全な人々を連れてきて、クライエントが望むような健全な行為を行ってもらいます。

それにより健全な関係性や、健全な信念、健全な価値観、安心や安全の構築を行います。

ステップ4:リソースの獲得
 現在に戻り、最初に外在化したものの変化を確認して、今後における注意点や、リソース、解決法などを獲得します。

 これらのステップの中で、トラウマを処理し、自分と外部との境界をしっかり持つことや、健全な愛着の形成を試み、回復の基盤を整えながら元々の自分らしさを螺旋をえがくように進みながら取り戻して行きます。

 

 

ホログラフィートークの良さと限界

ホログラフィートークの良さと限界として、嶺先生は主に次のような点を挙げています

 

<ホログラフィートークの良さ>
クライエントの安全性が高い

・ 軽催眠状態であるため、クライエントの意思の確認しやすく、意思を尊重し逸脱した形になるおそれが少ない
・ 問題場面でのフラッシュバック・パニックなどのネガティブな反応が起こりにくい。
・ 問題の起源に早期に到達でき、問題の本質と全体像を見極められ、 クライエントの理解や満足が高い。
・ 愛着のもつれの解消に役立ちそこから派生するさまざまな問題や影響を緩和・解消できる

・ 他の技法と一緒に使うことも可能

 

<ホログラフィートークの限界>

・コミュニケーションを取りにくい場合(症状や状態が不安定、知的な能力の限界など)

・イメージを多く用いるため、イメージワークに乗りにくい・苦手である場合

・一定時間の集中が難しい場合

 

私もクライエント役を体験させてもらったのですが、傷に自分で痛くない消毒を振りまいてあげるような心理療法だなぁと感じました。

セラピストは近くにいてサポートをしてくれるのですが、基本的には今の自分が過去の自分を癒しながら進みます。

そのため、やってほしくないこと、やってほしいことがわかりやすく、激しい痛みや不本意な痛みを伴うことなくゆっくりケアして癒してゆく、

そんなやさしさがホログラフィートークにはあると感じました。

 

また、ホログラフィートーク自体が統合的な心理療法ということもあり、他の技法との相性が良いという点も、統合的なアプローチの実践を行う身としては応用しやすく魅力に感じます。

 

 

おわりに

いかがだったでしょうか?

ホログラフィートークに限らず、どんなセラピーでもクライエントの状態や特性、セラピストとの相性・関係性によって向き不向きがあります。

導入するしても果たして今が良いタイミングなのか、他により合う方法はないだろうかとしっかり検討し、クライエント・セラピストが共に話し合いながら取り組みを進めることが重要と感じています。

 

そして、いつもトレーニングやワークショップを受けるたびに、セラピーの世界は奥深いな、まだまだ知らないことがたくさんあるなと思いしらされます。

そこからこのようにさらにまとめてみると、自分の中でも改めて復習ができるだけではなく、新たな疑問も生まれるもので、今後も時々実践しているセラピーについてまとめてみるのも良いかも!そんな気持ちが今沸いています。

このような機会を与えてくれた若手の会のみなさんに感謝をしたいと思います。

 

 

 

参考文献・資料

・嶺輝子 (2020). ホログラフィートークの複雑性PTSDに対する適応の可能性. 精神神経学雑誌, 122(10), 757-763.

・嶺輝子 (2018). 「楽になってはならない」という呪い : トラウマと心理的逆転. こころの科学, (202), 27-33.

・嶺輝子 (2017). ホログラフィートークとトラウマ治療. そだちの科学, (29), 69-74. 日本評論社.

・ホログラフィートークHP. 取得元 <https://www.holographytalk.com/>